発達障害の兄弟と私
私には、自閉症の兄弟がいる。
私とは性別が違う。彼はもう何年か引きこもっている。外へ出る時は、図書館に行くかアニメのイベントのときくらいである。
私は、彼と私は似ていると思っていた。
学生時代浮いていた私は、彼と私を結びつけられるのが嫌だった。それは彼も同じだった。
なぜか、公言していなくとも、一緒の学校に通うとバレるものだった。同じ学校に通う期間は一年だけだったが、それでも、私が彼に迷惑をかけているような気分で、彼と自分を結びつけられるのが、何となく嫌だった。
「ねえ、きみ、〇〇くんの妹でしょう?」
中学の頃、部活の先輩に言われたセリフを、今も覚えている。綺麗な人だった。いつも笑顔で、スクールカースト上位にみえて、話しかけるのもおこがましいような気がしていた。
当時の私は、学校が嫌いだった。小中高と、勉強を一生懸命するということを自負にして通っていたように思う。いや、真面目であることが私の矜持だった。だから学校をサボるということは、一度もしなかったと思う。一度くらいはあったかもしれないが、私は嫌なことは忘れる主義だから、学生時代の記憶は薄いのだ。
どんなに嫌な授業でも、授業には出ていた。授業が嫌だから逃げたら、ずっと逃げないといけない人生になる気がしていた。音楽の発表とか、議論とか、体育とか、人前に出たり競ったり力を合わせたりするのが、どうにも嫌だった。
けれど学校は、今思えば、うまく馴染めば楽だったように思う。今なら学校と言う場所があんなに怖くはない。
勉強さえすれば、一応許されるし、友達は選べる。必要以上に関わらなければ、標的にされることもない。
私がそう思えるようになったのは、傷つきながら無駄に力んで頑張っていた過去の自分がいるからだ。辛かった部活も、自分が抜けたら迷惑をかけることがわかっていたから続けられたのだ。部活があるから、当時あまり好きでない仲間とも、綱渡りするように関わっていた。今どうしてるかなんて、知らない。
社会は、学校よりも難しい。
そんな社会で、私よりも人と関わることが難しい彼が、働いていくのは難しい話だった。
就職活動のときに、彼が障がいだと知っていたら、常人と比べられて傷つく前に障がい者雇用で共に探せたかもしれない。
彼は普通に話せるし勉強もできた。けれど、あまり人と関わろうとしなかった。家族と一緒にいる時も、あまり自分のことを話さなかった気がするが、就職活動を辞めてから、更におかしくなったような気がする。
軽率に、「いい加減仕事したら?」とか、「障がい者雇用ならもっと良いところ行けるよ」とか、そういう無責任なことを言えば、きっと怒るだろうし、更に心を閉ざすかもしれない。
彼が自分から話しかけるのは、私か母だ。父や他の男兄弟のことは嫌っている。
なぜかは、わかる。
彼らはまるでわかっていない。何となく人をイライラささるような言動をしているし、私自身もイライラしている。
それに気づいていないことが、一番の問題なのだ。彼はよく彼らに対してキレていたし、私は何が彼をキレさせたのかもすぐにわかった。
人を気づかぬうちに煽っている。おどけたような話し方を、ユーモアと履き違えている。相手が触れられたくない部分に触れていることに気がつかない。そういう言動をしたときは、あまりイライラを隠しもせずに言い返してはいるが、無駄に思えたら何も言わないし沈黙で表す。
人を変えるのは難しいし、気づかせるのも骨が折れる。往々にして、そういう人間のほうが稼いでいるし、実際そうなっている。繊細であればあるほど、働くことに向かないようだ。
自閉症の彼は、気を遣わないと難しい。彼自身も、話をする時に気遣っている気配がある。だから私は、ここで間違えてはならないと思っている。
急いてはことを仕損じるってやつだ。
ずっとこのままではいられないことは、きっと彼も気づいている。
いつもアニメやゲームばかりの彼が変わるきっかけは何だろうと、見守りながら糸口を探すしかないのだ。
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自閉症と書きましたが、現在は「自閉スペクトラム症」と呼ばれているみたいです。自閉症の兄弟と書いたのは、あまり詳しく書きたくなかったからです。
身バレ防止のために詳しくはかけませんが、彼に変わってほしいという気持ちがあるので、行動してはいます。
もう少し、人と関わる方向に向けばよいと思いますが、あまり人と接しない仕事の方が向いているだろうと思います。
※詳しいことは、身バレすると困るのでnoteの有料記事でこっそり書こうかと思います。父や他の兄弟のこと嫌っていそうな書き方してますが嫌いではないです。
それでは、ありがとうございました。